アニメ、映像制作業界でBoxが採用されるワケ

今、Japanese ANIMEとして世界でも拡がりを見せている日本のアニメーション作品。

時代の移り変わりとともにステークホルダーや社会から求められることも変わる中、セキュリティ強化や業務効率化のために情報システムインフラを積極的に整備する企業も増えてきました。今回は、社内の情報システムインフラを作り、支え、改善してきた、ある老舗アニメ制作会社の管理部門の方たちに、Box活用についてお話を伺いました。

制作の舞台裏では、「最先端の技術で映像を作っているかと思いきや、実際の制作作業は昭和の時代から大きく変わっていないレトロな業界なんです」と業界裏話も飛び出し、とても興味深々に聞き入ってしまった今回のインタビュー。

それではご覧ください!


目次[非表示]

  1. 1.長い歴史の業界で最新デジタルを導入
  2. 2.Box APIを活用したシステム連動による新たな使い方
  3. 3.「Best of Breed(ベスト・オブ・ブリード)」
  4. 4.ユーザー視点を忘れないシステム環境の構築


長い歴史の業界で最新デジタルを導入

Box導入前の課題について教えてください。

そうですね、まずは業界特有の構造についてお話しします。

アニメーション業界に関わる企業数は大まかにいって約700社ぐらいあります。アニメの制作では、TV番組30分の作品1話作るのにも数10社の企業が関わることになり、役割分担された中で制作に取り掛かります。その制作過程で発生する放送前情報は機密性が高いにも関わらず、いまだFTP等により社外へファイル転送していましたが、利便性向上やセキュリティリスクの解消といった課題があり、他の方法がないか検討し始めました。特に当社の親会社からもセキュリティ強化は強く要請があったことも後押しして、ネットワーク構築をお願いしていた協力会社からジェイエスキューブを紹介してもらいました。


Boxの導入効果はいかがですか?

​​​セキュアな環境、且つデータのアクセス履歴の管理ができ、また容量無制限であることから、利便性とセキュリティを兼ね備えたツールだなと感じています。

導入当初はスモールスタートで開始したBoxですが、今は制作、営業等の各部署で社員の7割くらいにラインセンスを配っていて、社内外のファイル共有に使っています。

当初は全く想定になかったBoxの利用場面としては、テレビのバラエティ番組の中でアニメの名シーンを使いたいといった要望が比較的頻繁にあり、そういった要望に対してコンテンツのアーカイブをテレビ局に貸し出しています。これまでは、テレビ局から依頼のあったシーンを貸し出すときにはDVD等に保存し貸し出しをしていたので媒体作成と搬送の時間、そして手間が発生していたのですが、今はBoxのリンクを送るだけでとてもシンプルになりました。

他にも、海外の企業が当社のアニメ作品を購入検討したいときに、いままでは作品のサンプルをビデオテープ等に記録して海外まで送っていましたが、初めて取引する企業等の場合は、作品の映像データをそのまま送るなどのデータ管理上のリスクを懸念していたので、「閲覧のみ」に権限設定したBoxリンクを送るだけで、物流にかかる時間や費用だけではなくデータの流失事故等を未然に防ぐことにもとても役立っています。

私たち管理部からすると、こうして都度発生していた焼き増しの媒体管理や、どこに何をいつ送ったのかなどの履歴管理の観点からも、Boxに統一できることは資産の適正な管理ができる上、業務効率が格段に向上したと考えています。


業界全体でも貴社のようなデジタル化は進んでいるのでしょうか?

業界全体で言えば、まだまだ改善の余地はあると思います。ある程度の規模のアニメ作品を製作する際には、今の主流の作り方として出版社、音楽レコード会社、広告代理店、放送局、制作会社、その他出資者等の関係者が集まり、製作委員会というものを立ち上げて製作に取り掛かる事が多いです。昔は業界用語で「白箱」と言って、製作委員会の関係者の方へ放送前のアニメを媒体にダビングしてお配りしていました。今は関係者の方のご希望に合わせて媒体にダビングしたものをお送りしたり、Boxリンクをお送りしたりしています。時代に合わせて選択肢が増えたことは良いことだと感じています。


2分でわかる!Boxの有効活用 ※音が出ますのでご注意ください

 


Box APIを活用したシステム連動による新たな使い方

ドキュメント関係のプラットフォームとしても利用の幅を広げています。昨年新規に開発・導入した社内の管理システムとBoxを、BoxのAPIを使ってつなげました。当社事業の特徴としてライセンス販売をしているため、関わるドキュメントは膨大になるもののそれぞれが重要で、Boxによって契約書や商品化の企画書・仕様書等、すべてのドキュメントを一元的に管理できるようにしました。

他にも、外部機関や弁護士との重要書類等のやり取りにも活用しています。


「Best of Breed(ベスト・オブ・ブリード)」

Box導入前の環境は?

NASをつないでオンプレで構築していました。ハードディスクの冗長性を担保するという意味では、Boxのクラウド環境で構築できているのでとても良いと感じています。

一方では、私たちの業界のように取り扱うデータのファイル数が多かったり、転送するデータの容量が膨大になったりすると業務効率上「スピード」が重視されてきます。実はBoxなどのクラウド環境を利用する今も、社内のオンプレサーバは置いてあり、業務に合わせたサービスを使っています。ま、所謂なんちゃってベストオブブリードです。

メールソフトや社内のグループウェア、最近主流になってきているビジネスチャットもそうで、組織や業務・規模によって合うもの合わないものがそれぞれあるので、当社では体系だって統一したサービスを使うというよりその都度、環境にあった必要な機能を適宜導入しています。


ユーザー視点を忘れないシステム環境の構築

情報システムは、機能を強化したりセキュリティを強化していくことで、結果として操作が複雑になったりユーザーにとっての使い勝手が悪くなったりする事が往々にしてあります。一方でユーザーにとっては、できるだけ直感的に簡単に使えるシステムが良いに越したことはないです。面倒なこともなるべくやりたくないと思っています。ただ昨今の世の中の流れから、サイバーセキュリティへの対策強化を求められており、今後はユーザーの使い勝手とのバランスをとっていくことが今の喫緊の課題です。


インタビューを終えて

今回お話しを聞いたお二人は、管理部門への配属前は営業や制作の現場に関わっていらっしゃり、実際に手間暇かかかる業務プロセスの勘所もしっかりとお持ちでいらっしゃいました。業界構造や業務の流れをお聞きする中で、社内の従業員の他に、外部のアニメーター等多数の方々と関わっており、彼らの使用するシステムやツールもバラバラだそうで、体系だった環境を作ること自体が必ずしも必要ではないようです。

ユーザーフレンドリーな発想は、そういった背景から生まれてきているのかもしれません。

今後も法令対応や最新のシステム環境構築に向け、弊社も全力でサポートしていきたいと思います。


本日はお話いただき、誠にありがとうございました。



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