【ジェイエスキューブ トゥルーストーリー】ハンコと紙と、デジタルと
DXの第一歩とも言えるのが、紙書類をデジタルデータに置き換えるペーパーレス化。しかしながら、その最初の一歩さえも踏み出せていない中小企業が大多数ではないでしょうか。後先考えず紙を削減するワケにもいかず、かといって10年後20年後も安心できる“持続可能なペーパーレス”は、仕組みづくりが大変…。
そんな悩める企業に突破口を見出してもらうべく、今回は我がジェイエスキューブ自身のペーパーレス成功事例をご紹介。臨場感たっぷりに、ストーリー仕立てでお送りします。題して『ハンコと紙と、デジタルと』はじまり、はじまり〜!!
目次[非表示]
- 1.まるで進まないペーパーレス
- 2.拒絶された提案
- 3.“自ら助くる者”は、地方にいた
- 4.果たされた改革
- 5.終わりに
まるで進まないペーパーレス
昼休みのジェイエスキューブ経営企画室には、ゆったりとした時間が流れていた。だが社内の業務プロセス改革担当(通称:業革)のJ村S太郎は焦っていた。社長の肝いりで進めているペーパーレス化がほとんど…、いや、まったく進んでいないのだ。
それというのも、この新型コロナのせいだ。「ペーパーレスって言うのは簡単だけど、電子契約するなら取引先の同意がいるし、過去分の契約書の扱いも含めデータ保管の問題もあるし、何から手をつけていいのかサッパリ…」と手をこまねいていたところに世界を揺るがすパンデミック。テレワーク環境の整備にフルコミットせざるをえず、ペーパーレスはつい後回しになってしまった。
「まあ、そのおかげで日本の中小としては相当早い時期に全社テレワークが可能になったようなものだからヨシとするか…」
「ハンコ押すためだけに出社するなんて、まったくムダもいいとこですよねー」
テレワーク移行完了の余韻に逃避するJ村に、不機嫌な口調で話しかけてきたのは管理本部のC崎U子だ。彼より一回りも若いながら社内の事情通であり、先輩にも奥せずズケズケとモノを言う。以前からハンコ文化自体に懐疑的だったところに、今日はハンコ出社となればなおさらだ。
「長いこと受け継がれてきた慣わしだからねぇ」
「それをどうにかするのが業革さんだと思うんですけど」
痛いところを突かれた。かわさなくては。
「月末の何日かだけだし…」
「月末に集中するから社内が密になるんですよ!」
まずい、怒りのボルテージを上げてしまった。
「不在のときでも押してもらえるよう、部下にハンコ預けてる管理職もいるらしいじゃないですか」
「いや、その……」
「そんな形式だけの承認がまかり通るんなら、ハンコ出社って何のためにあるんでしょうね!」
「……」
答えに窮したJ村は、もはや白旗を上げるしかなかった。
「ちょっと待ってちょっと待って。言いたいことはわかった。理解した。というか俺も前からうっすらそう思ってた。何なら気づかないフリしてた。業革担当として情けない。この通りだ。だけど今はペーパーレスっていう目前の課題があってだな……ん? ペーパーレス!? となるとハンコは…」
「黙ってないで何とか言ってくださいよ。これみんなが思ってることですからね!」
とU子が言い終わるより先に、J村は叫んだ。
「それだ、ハンコだ! 電子契約なんて大掛かりなとこからスタートしようとするから、いつまでたってもペーパーレスは進まないんだ。まずは身近なところ、つまり押印を電子化すればいい。そうすればハンコ出社もなくなるし、使う紙も減るはずだ! ヒントくれてありがとう!」
とてつもない発見をしたかのように突然明るさをとりもどしたJ村は、怒りの矛先を見失って困惑するU子をよそに、意気揚々と管理本部に出かけていった。
拒絶された提案
はぁ…、とベッドで深いため息をつきながら、J村は、今日の出来事を思い返していた。ペーパーレス推進の足がかりとして、押印の電子化を進めようと思い立ったあの直後のことだ。稟議書・決裁書が集まる“社内イチ書類の多い部署”こと管理本部に乗り込み「ハンコをデジタル化してみては?」と提案してみたのだ。
しかし、自らのグッドアイデアに鼻高々だったJ村の自尊心は、膨大な月末業務をバッサバッサとクールに切り伏せていく管理本部の面々に、無慈悲にもへし折られた
「監査にダメって言われるかもしれないし、今すぐというワケにはいかないよ」
「ウチは書類をもらうほうだから、今のままでもとくに不満はないんだよね」
「邪魔するつもりはないけれど、協力するつもりもありません。やるならどうぞご勝手に」
「相談ごとなら別の日にしてもらっていいですかねぇ。おたくと違って忙しいから」
まったく…、できない理由なんて探せばいくらでも出てくるさ。要は面倒なだけなんだ。J村は、未来の手柄を前もって摘み取られたような感覚に憤った。
「天は自ら助くる者を助くって言うのに、これじゃウチの会社は助からないカモな」
そう自嘲して眠りにつくのが精一杯だった。
“自ら助くる者”は、地方にいた
「ワタシなんかハンコひとつもらうために半日かけてますからね!」
ヤケ気味の笑いとともに聞こえてきた声に、J村の目はテレビに釘付けになった。ハンコ文化の是非を問う街頭インタビューに応じている中年男性は、勤務する営業所から往復4時間かけて本社へ出向き、書類に承認印を押してもらっているのだという
男の開き直ったようなドヤ顔につられて苦笑しながら、J村は先日管理本部の一員に放たれた「ウチは書類をもらうほうだから不満はない」という一言を思い返していた。それはすなわち、「書類を出すほうには不満がある」ことの裏返しだ。つまりはこの男のような、作業負担の大きい側の業務改善を目的にすべきだったのだ。稟議書などの作成や提出を最も負担に感じているのは、おそらく本社の人間ではなく地方営業所の連中に違いない。J村は、さっそく全国の地方営業所の実情を調べてみることにした。
調査には、すでに社員の多くが使い慣れたZoomが活躍してくれた。わざわざ出張するまでもなく、お互いの自宅をリモートでつなぎ面談できるのだ。必要とあらば資料を簡単に共有することもできる。
そうして地方の営業部を中心に調査を重ねていくと、わざわざ越県してまでのハンコ出社を強いられているスタッフの存在や、書類の郵送に時間と手間がかかり過ぎている現状が見えてきた。
それにしても、地方営業所の面々はJ村の調査に協力的だった。押印が必要な書類として具体的にどんなものがあるかを分類しリストにまとめてくれたり、承認プロセスにどれだけの手順と負担が発生するかについて事細かな資料を作成してくれたりと、むしろJ村より積極的に動いてくれたのだ。さらには、電子印の導入で今の苦労が解消されることを理解した彼らは「一刻も早い実現を」と繰り返しJ村に懇願した
「やっぱり“天は自ら助くる者を助く”だな。これはイケる!」
J村は彼らの意気込みに、そう確信を得た。
ただし、本社の管理本部で一度手痛い失敗を経験済みのJ村は、今度は慎重だった。すべての地方営業所で一斉に開始するのではなく、リスクの少ないスモールスタートを切ることにしたのだ。
手始めに選択したのは、諸々の条件が整いやすい東北方面の営業所。見積もり印を押してもらうためだけの自動車移動が頻繁に発生している地域だ。ガソリン代と時間換算の人件費を東北6県分で試算すると、莫大なコストが押印に費やされていた。
J村はこの金額を格好の交渉材料として、本社の法務グループを電子印導入プロジェクトに巻き込んだ。東北の営業スタッフだけでなく、上層部の役員たちも納得できる方策にするためだ。
結果、これまで個人印で済んでいた文書はそのまますぐに電子印に移行、社印が必要な社外文書は社内規定を改定してから移行、法的拘束力を持つ契約書などについては電子契約という電子印とは別のスキームで対応することがあっさり決定した。導入や運用についても、これといったトラブルは発生していない。
こうしてジェイエスキューブの電子印とペーパーレスは、小さな、しかし確かな船出を果たしたのだった。
果たされた改革
東北地区でスモールスタートした電子印・ペーパーレスは、そこから水平展開するように、またたく間に九州や四国、中国などの営業所で次々と正式採用された。すべての地方営業所は、東北同様に紙書類への押印業務に苦しんでいたのだ。こうなるとヘッドクォーターとて、そのメリットに無関心ではいられない。地方に牽引されるように、本社の営業現場へと電子印はスムーズに浸透していく。
そしてついに──
「J村さん! いよいよ管理本部でも電子印を使うことになったんです!」
明るい声で彼を呼びとめたのは、先日のU子だ。
「営業部は地方も本社も使いだしたし、そりゃ管理本部も導入するしかないよね」
「こないだはキツイ言い方しちゃってスミマセンでした。J村さん、ちゃんと社員のこと考えててくれたのに」
「いいんだよ。おかげで思いがけずペーパーレスが大きく前進したからね」
「管理本部のみんなも、きっとJ村さんに感謝することになると思いますよ」
「そう願いたいね」
笑顔で言うとJ村は、次なるDXの施策に思いをめぐらせる。まだまだ実現できていないことが山積みだ。
「さて今度の改革も難題だけど、何とか頑張ってみるか」
Fin.
終わりに
以上、ストーリー仕立てでお送りした電子印・ペーパーレス物語『ハンコと紙と、デジタルと』。若干の脚色は入っていますが(実際にはこんなに冷徹な管理本部ではありません!)、我がジェイエスキューブでリアルに起こったことに他なりません。ちなみにペーパーレスのメリットと実現方法については、是非こちらの記事もご覧になってください。
では最後に、この物語のポイントをまとめてみましょう。
●ペーパーレス化に悩む中小企業は、電子印導入を足がかりにするのがオススメ
●導入を強く望む営業現場など、末端との協働で積み上げる「ボトムアップ型」のほうがスピーディ
●地方の協力を仰ぐ際は、Zoomなどのweb会議ツールが必須
●まずはスモールスタートし、そのあとで水平展開(エリア展開)、垂直展開(部門展開)すると低リスク
そして何より忘れていただきたくないのが、J村くんが口にしていた格言「天は自ら助くる者を助く」。自分たちで努力する中小企業に、必ず道は拓けます。ジェイエスキューブは、そんな自助の力を高めるお手伝いをこれからも続けていきます!