荷役作業での労働災害を防止するには? 現場でできる4つの安全対策
陸上貨物運送事業(以下、陸運業)では、クレーンによる貨物の上げ下ろしをはじめ、フォークリフトやコンベヤなどによる倉庫への入出庫といった荷役作業を行います。
この荷役作業中に労働災害が発生するケースが発生しており、その件数は毎年1万件近くとなっています。このような状況から、物流・運送事業者には、荷役作業の安全対策が強く求められています。
しかし、「荷役作業にはどのような安全対策が必要なのか」「具体的にどう取組むのがよいのか」と対応に悩まれている現場管理者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、陸運業における労働災害の現状をはじめ、荷役作業に求められる安全対策と具体的な取組みについて解説します。
出典:厚生労働省『荷役作業での労働災害を防止しましょう!』
目次[非表示]
- 1.陸運業における労働災害の現状
- 2.荷役作業における4つの安全対策
- 2.1.①基本の実施事項の策定
- 2.2.②墜落・転落の防止措置
- 2.3.③運搬機械の使用ルール・措置の策定
- 2.4.④腰痛の予防措置
- 3.まとめ
陸運業における労働災害の現状
陸運業における労働災害のうち、荷役作業中の災害は全体の7割以上を占めており、荷役災害の防止が課題となっています。
厚生労働省が公表した『令和3年 労働災害発生状況』によると、陸運業における労働災害のうち、休業4日以上の死傷者数は2019年から2年連続で増加しています。
▼休業4日以上の死傷者数
画像引用元:厚生労働省『令和3年 労働災害発生状況』
また、労働災害の型別に見ると、死傷者数は荷役作業中の“墜落・転落”が最も多く、全体の26.9%を占めています。
さらに近年では、荷役作業中の“動作の反動・無理な動作”による労働災害が増加傾向にあり、2017年から35.5%も増加している状況です。
▼陸運業における労働災害の発生状況
画像引用元:厚生労働省『令和3年労働災害発生状況の分析等』
なお、動作の反動・無理な動作による労働災害の約半数は、腰痛であることが報告されています。
出典:厚生労働省『令和3年 労働災害発生状況』『令和3年労働災害発生状況の分析等』
荷役作業における4つの安全対策
厚生労働省では、陸運業での安全対策を推進するために、『陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン(荷役ガイドライン)』を公表しています。
ここからは、荷役ガイドラインに基づいた4つの安全対策を解説します。
①基本の実施事項の策定
陸運業は、輸送形態や荷姿が多様化しており、荷主・荷送人・荷受人、運送事業者などとの役割分担、作業条件が複雑かつ多岐にわたっています。
労働災害防止の措置を検討する際は、荷役作業の役割分担や陸運事業者と荷主の実施事項など基本対策を定めることが重要です。
▼基本対策の例
▽陸運事業者
- 荷主に荷役作業の有無を事前に確認して、未確認の作業は行わせない
- 荷役作業を安全に行える環境や服装・保護具を整備する
- 荷主の荷役作業指示が安全でない場合、報告と荷主への改善要請を行う
▽荷主
- 事業場での荷役作業を陸運事業者に事前に通知する
- 到着時刻を設定する際は、安全作業ができるように、荷役・荷待ち・休息時間を考慮する
- 陸運事業者からの改善要請に対応して、指導に取組む
出典:厚生労働省『荷役作業での労働災害を防止しましょう!』『陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン』
②墜落・転落の防止措置
荷役作業を行う事業場では、墜落・転落防止のための措置を講じます。
陸運業での荷役作業による労働災害では、荷台や昇降設備からの墜落・転落事故が多くを占めています。
事業者は、作業員に対して安全に作業を行うための事項を遵守させるとともに、安全設備・保護具を用意するといった対策が求められます。
▼墜落・転落の防止措置の例
- 荷役作業前に作業環境の状況・不備確認を行わせる
- 荷台上に簡易作業床や移動式プラットホームを取りつける
- 荷台施設に安全帯取付設備(親綱、フックなど)を設置する
出典:厚生労働省『荷役作業での労働災害を防止しましょう!』『陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン』
③運搬機械の使用ルール・措置の策定
荷役作業時に使用する運搬機械や設備の使用ルール・措置を定めて、安全に作業ができる環境を整備することも重要です。
荷役作業に関係する労働災害のなかには、作業時に使用する運搬機械による事故も一定数見られます。
▼使用ルール・措置の例
運搬機械 |
策定例 |
フォークリフト |
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クレーン |
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コンベヤ |
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ロールボックスパレット・台車 |
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出典:厚生労働省『荷役作業での労働災害を防止しましょう!』『陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン』
④腰痛の予防措置
荷役作業時の動作の反動や、無理な動作による労働災害を防ぐには、作業環境・内容別に腰痛の発生リスクを把握したうえで、腰痛予防の措置を講じることが必要です。
荷役作業時は、重量物の運搬や連続の立ち作業などによって、腰痛の発生につながりやすくなります。事業者には、腰痛予防に向けて対策を講じることが求められます。
▼腰痛予防措置の例
- 荷役機械・道具を活用して運搬作業を自動化・省力化する
- 負担の大きい作業を継続しないように、複数の作業と組み合わせる
- 腰痛予防のための労働衛生教育を実施する
なお、腰痛を予防するには、作業時の負荷を軽減したり、自動化したりするマテハン機器やマッスルスーツの活用が有効です。マテハン機器とマッスルスーツの導入メリットについては、こちらの記事で解説しています。
出典:厚生労働省『荷役作業での労働災害を防止しましょう!』
まとめ
この記事では、荷役作業での労働災害について以下の内容を解説しました。
- 陸運業における労働災害の現状
- 荷役作業の安全対策
陸運業では、労働災害のうち荷役作業時の災害が7割以上を占めており、墜落・転落や無理な動作などによる事故が発生しています。
荷役作業での労働災害を防止するためには、陸運事業者と荷主の関係者間で、安全対策に取組むことが必要です。
今回挙げた安全対策の取組みを踏まえて、事業場の作業環境改善や荷役作業の自動化・省人化、荷役機械使用のルール策定などを行ってはいかがでしょうか。
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