女性従業員が運搬できる重量物の重さとは? 安全に作業を行うための対策
物流倉庫や工場などの現場では、人力によって重量物の運搬を行うことがあります。近年は、現場の人手確保に向けて、女性の採用促進を考える企業もあります。
重量物の運搬作業を行う現場では、通路・階段などでの転倒事故、中腰や無理な姿勢での作業による腰痛といったさまざまな労働災害が発生しています。
運搬時の事故や腰痛を防ぐために、女性が取扱う荷物の重さが法令によって規制されています。現場管理者は、重量物の取扱いに関する制限について理解したうえで、適切な安全管理を行うことが重要です。
この記事では、女性従業員が取扱う重量物の重さ制限をはじめ、安全な運搬作業を行うための対策について解説します。
出典:厚生労働省『人や重量物の運搬作業の基本』/高知労働基準監督署『小売業のみなさまへ 労働災害防止のために』
目次[非表示]
- 1.重量物を運搬する際の重さ制限
- 2.重さ制限の範囲内でも注意が必要
- 3.安全に運搬作業を行うための対策
- 3.1.①作業姿勢・動作の指導
- 3.2.②作業環境・体制の見直し
- 3.3.③補助器具・道具の導入
- 4.まとめ
重量物を運搬する際の重さ制限
重量物を人力で運搬する際、女性が取扱える荷物の重さについて、制限が設けられています。
人力での運搬作業では、荷物の重量が重くなるほど腰痛リスクが高くなるほか、同じ姿勢での作業や長時間の作業なども腰への負担となります。
女性は男性と比べて、筋力が少なく身体への負荷が大きいと考えられるため、『女性労働基準規則』第2条『年少者労働基準規則』第7条において、取扱う重量物の重さが定められています。
▼女性:重量物の取扱い制限
16歳未満 |
16歳以上18歳未満 |
18歳以上 |
|
断続作業 |
12kg |
25kg |
30kg |
継続作業 |
8kg |
15kg |
20kg |
『女性労働基準規則』第2条を基に作成
また、男性従業員は『年少者労働基準規則』第7条において重量物の取扱いが以下のように制限されています。
▼男性:重量物の取扱い制限
16歳未満 |
16歳以上18歳未満 |
18歳以上 |
|
断続作業 |
15kg |
30kg |
定めなし |
継続作業 |
10kg |
20kg |
定めなし |
『年少者労働基準規則』第7条を基に作成
なお、女性が物流業界で活躍するために必要な取組みについては、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
出典:厚生労働省『Ⅱ.腰痛を予防するための「見える化」』『人や重量物の運搬作業の基本』/e-Gov法令検索『女性労働基準規則』『年少者労働基準規則』
重さ制限の範囲内でも注意が必要
女性労働基準規則で定められた重量物の取扱い制限の範囲内であっても、労働災害につながるケースがあるため注意が必要です。
陸上貨物運送事業では、荷役作業での労働災害が毎年1万件以上発生しており、労働災害全体の1割近くに達しています。また、運搬作業での事故・腰痛は、動作・作業要因や環境要因など、複数の要因が重なって発生します。
▼重量物の運搬作業による事故や腰痛の要因
要因 |
具体例 |
動作・作業要因 |
|
環境要因 |
|
運搬時の事故・腰痛を防ぐには、荷物の重さだけでなく、作業方法や荷物の状態を踏まえて安全に作業できる環境を整備することが求められます。
なお、荷役作業における労働災害の現状や対策については、こちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『人や重量物の運搬作業の基本』『職場における腰痛予防対策指針』/国土交通省『荷役作業での労働災害を防止しましょう!』
安全に運搬作業を行うための対策
女性が重量物の運搬作業を安全に行うには、制限された荷物の重さを遵守するとともに、作業方法・環境の見直しを行うことが重要です。
ここでは、安全に運搬作業を行うための対策について紹介します。
なお、ここで紹介する方法については、厚生労働省が公開している『人や重量物の運搬作業の基本』でも分かりやすく解説されています。併せてご確認ください。
①作業姿勢・動作の指導
運搬作業による転倒事故や腰痛を防ぐための対策の一つに、作業姿勢・動作について従業員へ指導を行うことが挙げられます。この指導は、女性だけでなく男性にも行うことが大切です。
具体的な指導内容は以下のとおりです。
▼指導内容の例
- 片膝を曲げて腰を落としてから荷物を持ち上げて、膝を伸ばして立ち上がる
- 荷物を持ち上げる際、呼吸を整えて腹筋に力を入れる
- ひねり、後屈ねん転は体ごと向きを変えて、正面で作業をする
- 運搬作業時は、荷物をできるだけ体に近づける
- 作業台の高さは肘の高さ、椅子の高さは両足裏全体が地面に着く高さにする
- 高低差のある場所に置いた荷物は、身長差の少ない2人以上で運搬する
- 運搬時には、足元や周囲の安全を確認する
出典:厚生労働省『人や重量物の運搬作業の基本』『職場における腰痛予防対策指針』
②作業環境・体制の見直し
女性が重量物を取扱う作業では、作業内容・作業時間・作業する人数を考慮して、作業環境や体制を見直すことも重要です。
具体的な取組みとしては、以下が挙げられます。
▼作業環境・体制の見直し例
- 作業中に休憩時間を設けて、その時間は姿勢を変えられるようにする
- ほかの作業を組み合わせて長時間連続しないようにする
- 荷物に取っ手を付ける、包装して持ちやすくする
- 足元や周囲の安全が確認できる明るさを保つ
- 作業・動作に支障がない作業場の広さを確保する
- 作業場内の温度を適切に保ち、低温環境化での作業では暖房設備を設置する
なお、作業内容や時間などについてはルールを作成するとともに、従業員の健康状態・特性・技能レベルなども考慮して人員配置を行う必要があります。
出典:厚生労働省『人や重量物の運搬作業の基本』『職場における腰痛予防対策指針』
③補助器具・道具の導入
重量物の運搬作業を省人化・省力化できる補助器具・道具を導入することも、事故や腰痛の対策につながります。
筋力の少ない女性でも対応できるように、運搬作業の省人化・省力化を図ることが大切です。
運搬作業を省人化・省力化できる補助器具・道具には、以下のようなものが挙げられます。
▼補助器具・道具の例
種類 |
概要 |
リフター
(昇降装置)
|
前面のフォーク(爪)をパレットや荷物に差し込んで、運搬・昇降をする運搬機器 |
コンベア |
荷物をレーンに載せて、自動かつ一定スピードで運搬する装置 |
台車・二輪台車 |
キャスター付きの台に荷物を載せて、運搬作業を省力化する補助器具 |
自動搬送装置 |
センサーや磁気テープなどのガイドに沿って、荷物を自動で運搬する機器 |
バキュームリフト |
真空ポンプと吸着パッドで荷物を吸着、ホースの伸縮で荷物を持ち上げ・下げする機器 |
アシストスーツ |
人工筋肉によって重い荷物を持ち上げる作業を補助減するリュック型の装置 |
出典:厚生労働省『人や重量物の運搬作業の基本』『職場における腰痛予防対策指針』
なお、ジェイエスキューブでは、株式会社イノフィスのアシストスーツ製品“マッスルスーツ”を取扱っております。
マッスルスーツの詳細については、こちらをご覧ください。
まとめ
この記事では、女性が運搬できる重量物について以下の内容を解説しました。
- 運搬作業の重さ制限
- 重量物の運搬作業によるリスク
- 安全に運搬作業を行うための対策
重量物を人力で運搬する際、事故や腰痛を防ぐ観点から、女性が取扱う荷物の重さの制限が定められています。物流倉庫や工場では、法令で定められた荷物の重さを遵守することが重要です。
また、事故や腰痛に至る要因は複数あるため、重さ制限だけでなく、作業方法・環境などを見直して、女性も安全に運搬作業を行えるようにすることも必要です。
現場でできる対策としては、運搬時の作業姿勢・動作の指導をはじめ、作業環境・体制の見直し、補助器具・道具の導入などが挙げられます。
ジェイエスキューブでは、重量物の運搬時にかかる負荷を軽減するバキュームリフトやリフター(昇降装置)、台車、自動搬送装置などの製品を取扱っております。女性やご年配の方の重量物の運搬をサポートするほか、運搬作業時の腰痛予防にもお役立ていただけます。
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